日本史オンライン講義録

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051 鎌倉文化(文学・学問)

目次

 前回は鎌倉新仏教といわれるいくつかの宗派についてお話をしましたが、今回は鎌倉文化の文学や学問についてみていくことにしましょう。

文学

和歌

和歌の重要なトピックは1つ目に「新古今和歌集」の編纂が挙げられます。万葉集古今和歌集新古今和歌集を総称して三大和歌集とも言われますが、その一角をなすのがこの新古今和歌集です。編纂を命じたのは、後鳥羽上皇です。そして、実際に藤原定家らが撰者となり編纂されました。あるいは、この新古今和歌集天皇や公家らの和歌なのですが、歌を詠む武士が増えてきました。例えば、西行(さいぎょう)が代表的ですが、「山家集」で和歌を残しています。そして、もう一人の代表的な歌人といえば、将軍でありながら歌が上手い、まぁ言ってしまえば政治の世界よりも歌の世界の方が向いていたのではないかと言われるのが3代将軍・源実朝で、「金槐和歌集」です。実朝の歌っていうのは、少し滅びの美学っていう要素が色濃く入っていまして、もしも将軍じゃなかったら、きっと若くして命を落とすこともなく歌人として大成していただろうと思います。

軍記物語

そうすると、鎌倉時代は武士社会なので武士の活躍っぷりを書いた軍記物語が多く書かれることになります。例えば、平氏を倒したときにその業績のあった人たちの子孫が「私のご先祖様は、かつてこんなに大きく活躍したのです。」というようなことを残したいわけです。ですので、軍記物っていうのは武士の時代ならではの文学作品だといえます。そしたら、軍記物の代表として、やはり「平家物語」が挙げられます。

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 

沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす

おごれるものも久しからず ただ春の夜の夢のごとし

たけき者も遂にはほろびぬ 偏に風の前の塵に同じ

 中学校のときに暗記させられた人も多いのではないでしょうか。琵琶法師による「平曲」として語られましたね。この平家物語、作者は信濃前司行長か?と言われていますが、源平の争いのいろんな場面をいろんな人が語り継いで、それがいつしか集まっていったものを人々の求めによって、琵琶法師らが琵琶を片手にベンベンっと節を付けて語ったものです。その他にも、この時代に作られた軍記物としては、保元物語平治物語源平盛衰記などが挙げられます。鎌倉幕府御家人らにとっては、自分のご先祖様の業績をぜひ描いてほしいといったニーズも多かっただろうと推測されます。では、どんどんいきましょう。

説話文学

古今著聞集(こきんちょもんじゅう)です。このあたりは、古典の文学史でも出てくるとおもうのですが、橘成季(たちばなのなりすえ)が古今の説話(いろんな教訓めいた話や面白い話)を収録しました。そして、沙石集(しゃせきしゅう)です。無住(むじゅう)という人が、仏教の教訓などを集めた仏教説話集を残しています。

随筆

そしたら、有名どころの登場です。鎌倉時代の随筆といえば2つ。方丈記(ほうじょうき)ですね。鴨長明(かものちょうめい)の作です。

ゆく河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず

淀みに浮かぶうたかたは かつ消えかつ結びて

久しくとどまりたるためしなし。

つまり、人も社会も移り変わりゆく世の中である、転変して虚しいといったように無常観を表しています。

もう一つは、吉田兼好兼好法師徒然草ですね。です。鎌倉随筆の代表です。

 徒然なるままにひぐらし すずりに向かひて

心に移りゆく よしなに仕事に

そこはかとなく書きつくれば あやしゅうこそものぐるほしけれ

今でも、我々ちょっと唱えることができるくらい有名な書き出しで始まっていますよね。

歴史物語

それでは、つづいて歴史物語です。愚管抄(ぐかんしょう)と言った作品があります。慈円(じえん)という人が作者です。歴史を貫く原理を探りました。歴史は繰り返すとよく言われるように、歴史にはそれぞれ原理があって似たようなことが起こるものであり、それに共通する原理とはどのようなものかを探るわけです。この歴史を貫く原理のことを慈円道理と呼びました。

そして、吾妻鏡ですね。鏡という文字は、歴史書によく用いられる言葉ですね。歴史は世の中を写す鏡だからでしょうか。吾妻っていうのは東(あずま)つまり、朝廷からみて東の=幕府のっていう意味です。京都からみて東にある鎌倉幕府の歴史を編年体で表しました。歴史物語にはその他にも、水鏡や、虎関師錬(こかんしれん)元亨釈書(げんこうしゃくしょ)」などです。元亨釈書とは日本仏教史のことですね。

日記

十六夜日記」を書いたのが、阿仏尼(あぶつに)です。この阿仏尼が、鎌倉に赴いたときに紀行文を書きました。

学問

有職故実

有職故実(ゆうそくこじつ)とは朝廷の儀礼や先例を研究する学問です。この有職故実を研究した代表的な人物として、順徳天皇があげられます。順徳天皇は、「禁秘抄(きんぴしょう)」朝廷が今までやってきた儀礼や先例を滞りなく行うために書いたものですね。

金沢文庫

続いては、学問のジャンルとまではいかないのですが、トピックとして挙げられるのが金沢文庫です。これは金沢実時によって建てられた図書館です。横浜からしばらく行ったところに金沢八景というところがあって、今の横浜市にあります。この金沢八景というところには八景島シーパラダイスっていう水族館&遊園地みたいなところがあります。

朱子学

宋の朱熹(しゅき)という人が初めた儒学のひとつで、大義名分論とといって、「そもそも親とは何か、子とはどうあるべきか、先生とは何か、生徒とどうあるべきか」などといったことを考えて、そこから日頃の生活習慣に当てはめようとする、そのような大義名分論が特徴です。

神道

この時代の神道は、伊勢神道がはじまります。伊勢神宮の神官である度会家行(わたらいいえゆき)による神道理論が学問の一つとして挙げられます。

さて今回は、主に列挙するスタイルでお話をしてきましたが、鎌倉時代の文学あるいは学問についてでした。今回は以上です。