日本史オンライン講義録

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080 朝鮮と琉球・蝦夷地

さて前回は、江戸時代の初期の外交を紹介しました。たとえばイギリス・オランダと新たに関係を結び、そしてスペイン・ポルトガル・中国、また日本人が朱印船貿易で海外へ多く出ていったというお話でした。これから鎖国をしていこうとする日本なのに、遠く離れたメキシコに使者を派遣したり、伊達政宗なんかはスペインに使者を派遣したりと、割と積極的な外交姿勢でしたね。今回は、朝鮮と琉球蝦夷地ということで、幕府外交の続きのお話をしたいと思います。

 

これら朝鮮と琉球蝦夷地との外交の特徴は何かというと、幕府はそれぞれの国との窓口となる藩を決めたのでした。例えば朝鮮であれば、朝鮮半島と九州の間にある対馬藩が、琉球であれば薩摩藩が、そして蝦夷地であればアイヌ民族あたりの窓口になる松前藩があって、その3藩の窓口を通じて朝鮮・琉球蝦夷地と交流を持ったのでした。

 

朝鮮

朝鮮といえば豊臣秀吉朝鮮出兵をして、日本との関係が一時的に悪化したんでしたね。しかし、いつまでもケンカして対峙しつづけるにしても物理的に距離が近すぎることもあって、対馬藩はとくに難しい立ち位置でした。ですので、朝鮮との関係を修復するため、朝鮮と対馬藩の宗氏との間で己酉約定(きゆうやくじょう)を結びます。この取り決めの中で、釜山に倭館日本大使館のようなもの)を設置して、そこに日本人を派遣して朝鮮との窓口にあたらせました。そして、この宗氏というのは基本的に朝鮮と関係を結ぶわけですが、幕府も対馬藩に対して朝鮮との貿易は独占してもよいとしたのでした。一つは理由があって、対馬というのは山がちでお米が育てられるような土地がほとんどないんですよね。そこで、幕府は宗氏をある程度食わせてやらなければならないだろうということで貿易の特権を与え、貿易によってゲットした利益は幕府のものだけにするのではなく、対馬藩にもある程度分け与えたのでした。そして、朝鮮から幕府に使節が遣わさせるのですが、このことを通信使といいます。主に、幕府の将軍が変わった時に代替わりの挨拶に派遣されたのがこの通信使でした。

 

琉球

では琉球との窓口になるのは何藩でしょうか。はい、薩摩藩ですね。当時琉球は、琉球王国といって王様が治めていました。この王国に対して、薩摩藩(いまの鹿児島県)の島津家久琉球を征服し、薩摩藩支配下に入ります。ただこの琉球王国というのは、中国に朝貢貿易を行っていたので、中国にも所属しているという形になります。つまり琉球は、日本そして中国に両属する関係になっていたのです。で、薩摩藩はこの琉球からどのような利益をあげていたのかというと、薩摩藩はこの琉球から当時貴重とされていた黒砂糖を入手し、収入を上げていました。また、琉球は中国にも所属していることから、中国から入ってくる産物を薩摩藩がもらうという形でした。そして、琉球から幕府へ遣わされた使節謝恩使といいました。これは、琉球国王の代替わりごとに幕府へ挨拶に派遣されたのです。もう一つは、慶賀使といって、これは江戸幕府の将軍の代替わりごとに挨拶に派遣されました。

 

蝦夷

さて、つづいては蝦夷地を見ていきましょう。蝦夷地との関係ですが、蝦夷地には新しく松前藩が設置されましたが、この松前藩松前(蠣崎氏を改称)に蝦夷地の支配を認めました。松前藩は米がたくさんとれるかというとそうではありませんでしたので、幕府は松前藩アイヌとの交易独占権を与えました。このようにアイヌとの交易をする場所である商場(あきないば)を設置していくのでした。この商場を家臣にエリアを決めてここでのアイヌの交易をあなたの収入にしてもよいですよ、としました。これを商場知行制といいます。松前氏が、家臣に対して商場の支配を認めます。そして、この商場でのアイヌとの取引の利益は知行として与えました。しかし、家臣がそれぞれの地で点在しているのは大変だし、藩としては家来を手元に置いておきたいので、商場というのを変えて場所請負制という制度に変えました。これはなにかというと、日本人の和人商人に商場の経営を請け負わせました。商場は商人に任せ、利益を藩がもらい、家臣に分け与えることになります。ただし、場所請負制が始まる頃になると、和人商人はアイヌを危険な漁場に連れ出してこき使ったりして暴利をむさぼるようになっていくのでした。そこで、アイヌの首領であるシャクシャインさんを中心としてアイヌの蜂起が起こるのですが、これが失敗してしまうとかえって支配が厳しくなってしまい、結果的には裏目に出たのでした。

 

まとめ

ということで今回は朝鮮・琉球蝦夷地との外交についてみていきました。朝鮮との窓口は対馬藩の宗氏が、琉球との窓口は薩摩藩の島津氏が、蝦夷地との窓口は松前藩松前氏がそれぞれ担うということをお話しました。今回は以上です。