日本史オンライン講義録

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090 元禄文化②

前回は元禄文化の学問として儒学についてのお話をしましたが、今回は儒学以外の学問について触れていくことにします。では、自然科学からお話をしましょう。

 

自然科学

本草

本草学というのは本来の意味は、人間に有用な薬草であったり、漢方薬の材料になる動物の角であったり、そういう草木などを収集していろんなものを記録していく博物学のことをさします。代表的な人物としては、貝原益軒(かいばらえきけん)ですね。この代表的な著作が「大和本草」です。福岡藩朱子学者として知られている人物です。他にも稲生若水(いのうじゃくすい)という人が「庶物類纂(しょぶつるいさん)」を著しています。この人は加賀藩主の前田綱紀に仕えた儒学者でもあります。

 

農学

宮崎安貞(みやざきやすさだ)の「農業全書」です。割としっかり練られた農業書でし て、体系付けられているし順を追って農業のいろんな手順も紹介しているし、北から南までその土地の農業をカバーしていたといわれています。

 

和算

和算といえば計算のことなのですが、吉田光という人が、計算の入門書「塵劫記(じんごうき)」を著しています。たとえばそろばんを使った掛け算や割り算、あともう少し難しくなると金利の計算とか両替するときの両替率の計算をそろばんで利用するなどが記されています。そして、関孝和という人は「発微算法(はつびさんぽう)」という本をだして、面積や体積、あるいは微積分など高度な数学などxやyなどを使わずに漢数字でやってのけてしまうほど江戸時代の脅威とまでいわれた人物です。円周率も3.141592653589まで出した人でもあります。

 

天文学

天文学安井算哲という人物が有名です。この人は、ニックネームも持っていて渋川春海(しぶかわしゅんかい)といいます。この人はモンゴルが支配していた元の授時暦(じゅじれき)を元に貞享暦(じょうきょうれき)を作成しました。

 

歴史学・国文学

歴史学では、いままで出てきた人だらけです。たとえば林羅山やその子どもの林鷲峰ですね。この人達が「本朝通鑑(ほんちょうつがん)」を著しています。その他にも、新井白石が歴史書を読んで私なりの意見をまとめましたという「読史余論」やら、日本書紀の研究を行った「古史通」などが有名です。これらの人々は朱子学者といって、歴史を紐解いて誰が偉いだとか、上下関係の秩序の根拠として歴史を紐解いたのでした。あとは、徳川光圀が「大日本史」を編纂させています。

 

国文学

のちに文化史を勉強するときに国学というジャンルの学問を説明しますが、この国学に影響を与えていきます。たとえば戸田茂睡(とだもすい)という人は、日本の古くからの文学である歌に着目をして、制の詞への批判を行い歌学の革新を唱えたのでした。むかし、万葉集があり、そこから古今・新古今と移り変わっていくのですが、万葉集は自由な表現をしていたのに対して、古今や新古今はある程度ルールに沿ってきちんと固まった様式というのが美しいとされたのでした。逆を言ってしまうと、自由なことが詠めない、どちらかというと型にはめて表面をきれいにするようなイメージの歌風が強いのでした。そこで戸田茂睡は、型(制の詞)にハマってたら気持ちは伝わらんだろう?ということでちょっと俗語を使ってでも人の気持ちをちゃんと詠むべきだと考えたのでした。この戸田茂睡の考え方をより発展させたのが、契沖(けいちゅう)という人です。この人が、万葉集を研究し、「万葉代匠記」という代表作を著しました。昔の万葉集はもっと自由で生の人の気持ちを詠んでいたのであり、もうちょっと自由で俗っぽい詞を使ってでも、聞き手をしっかりとらえるべきだと考えたのですね。そして、もうひとり北村季吟(きたむらきぎん)です。この人は源氏物語万葉集の研究などを行って源氏物語湖月抄」に記されました。

 

西洋の研究

鎖国が政策としてあるものの、だからこそ知りたいという人もいるわけですね。また幕府としても、西洋のことを全く知らないってことにはいかないわけです。やっぱり情報としてほしいわけですね。ただこれらの本を幕府も読むのですが表には出さないっていう対応をとるのでした。

たとえば西川如見(にしかわじょけん)といって天文学者なのですが、天文学を勉強する上で、ある程度西洋の記述とかも勉強しなければならないわけなので、そこで長崎に行って天文学についての勉強をしていくと、少しずつ西洋の様子なんかが情報として手に入るようになりまし た。そこで、西川如見が見聞きした各国の地誌をまとめた「華夷通商考」などが代表的です。

続いて、新井白石です。代表作が「采覧異言(さいらんいげん)」です。これが世界の地理、そして「西洋紀聞」といった海外事情をまとめたものです。また、イタリア人宣教師であるシドッチを尋問して記述をさせたことでも有名です。このシドッチという品物はわりと面白い人生を歩んでいるんですね。シドッチはイタリアの産まれで宣教師になって当時スペイン領であったマニラにいくわけですが、マニラで布教活動していく中で日本がいまキリスト教を禁じられていることを知ります。そして、キリシタンの現状を知ることになるわけですが、そうするとシドッチは行きたくなるわけですね。日本では禁止されている、そこをあえて私は行きたい!と。日本に行って禁止されているキリスト教をあえて伝えてみたいんだーとなるわけですが、もちろん周りに人々はシドッチを止めに入るんですが、シドッチは「今こそ日本に行って、風穴をこじ開けるのだ!」ということで船を仕立てて、身なりも和服を着て、ちょんまげまで結ってしまうんですね。これで日本人にしかみえねえだろっていうことで、たどり着いたところが屋久島です。そうすると屋久島の現地の人たちに一発でバレちゃうんですよね。そりゃ西洋人がちょんまげを結っているわけだから違和感しかない。そして話しかけられるんですよね「お前さん、誰だい?」って。シドッチとしては話すことも当然できるわけではなく、江戸に送られるわけですね。そして江戸で新井白石らに「いま西洋ってどうなってるんだい?」「キリスト教の動向ってどうなんだい?」といろいろ尋問されるんですね。まぁシドッチも危険を犯してまで日本にきてこうして西洋のこともいろいろ聞かせてくれたわけだから、そこは新井白石もシドッチのクビは切らずに軟禁状態で外には出ずに暮らすことになります。軟禁状態ですので、外には出ることは許さず、そこで一生を終えるわけですが、軟禁状態のときにシドッチさんの世話役夫婦がいたんですけども、シドッチさんはなんとその世話役夫婦にキリスト教を布教しちゃったんですね。結局はこのことが幕府にバレてしまい、軟禁状態から今度は地下牢に入れられて、10ヶ月後に亡くなってしまうのでした。