日本史オンライン講義録

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103 化政文化② 文学

では今回も化政文化をやっていきましょう。

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小説

まずは小説からみていきます。よく教科書とかで取り上げられているのが,この文学の変遷の図解なのですが,井原西鶴あたりが登場した浮世草子元禄期に登場したジャンルの小説でしたね。それが,宝暦・天明では洒落本黄表紙などがでてきて,その内容がちょっと粋な女遊びの仕方みたいなものだったので,世の中の風紀を乱すということで弾圧を食らっていくわけです。中でも,浮世草子から洒落本のラインっていうのはどちらかといえば絵よりも文章中心といったジャンルにわけられ,赤本・青本・黒本そして黄表紙のラインはどちらかというと絵中心の漫画本のような感じです。ただ,洒落本に関していうと,絵もふんだんに盛り込んでどちらかといえば思いストーリーというよりかは,どちらかというと軽いラブストーリーものであったり,ライトノベルのような感じに仕上がっています。

そして,今回勉強している化政文化の時代になると,たとえば黄表紙からの流れを汲むのが,合巻といって黄表紙を数冊セットにした,いってみれば漫画が数冊分くらい綴じ込まれてあるオムニバス的な分厚い漫画本といったイメージの本です。この洒落本の中でも,恋愛系タッチで描かれた粋な女遊びの仕方の流れを汲む化政文化の本を人情本といいます。人情本や合巻というのは,やはり風紀を乱すってことで天保の改革で弾圧をされてしまいます。一方で,洒落本からの流れを汲む,でも恋愛要素を取り除いたちょっとおもしろい庶民の生活ぶりなどお笑い的な要素で描かれた軽く読むことのできる本のことを滑稽本といいます。

そして,一番上のライン,出版文化がさかんになっていくと,読書家も増え,そういった読書家からすると,漫画やライトノベルではちょっと物足りないわけですよね。もっと読み込みたい!そこで,しっかりとした骨太の小説が人気となって,文字通り読本(よみほん)といった長編ストーリーで,本当に字だらけの本が求められるようになります。では,上の図を頭においておきながら,詳しくみていくことにしましょう。

 

読本

しっかりとした小説ですが,やっぱり求めるストーリーは勧善懲悪(正義の味方が悪をこらしめる系)の趣旨で描かれた文章主体の小説を読本といいます。代表的な作品として,上田秋成の「雨月物語」ですね。ちょっと怪異な小説でサイコ・サスペンス的なタッチで描かれているといえばイメージできるかなと思います。そして,曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」あるいは「椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)」などがあります。南総里見八犬伝なんていうのは,犬を持った8人の若者が,「仁」「礼」「智」「信」「悌」「忠」「義」「孝」と書かれた珠を別々の場所でそれぞれ持っているのですが,しかしこの8人の若者が運命に導かれて1つの場所に結集するっていうようなお話です。こういうバラバラに散らばったボールを集める系のアニメってありますよね?ドラゴンボールとかね,7つのボールを集める過程を描いたストーリーで展開していくアニメですね。あと,ドラゴンクエストⅢっていうゲームが昔ありましたが,あれなんかも3つのオーブを集める系のストーリー展開です。こういう集める系の話ってよくありがちで,読み手としては,集まったらどうなるんだろう?集まったあとのストーリーを見てみたい!ってなりますよね。まぁ,そういう感じで8人の若者が運命に導かれて集まり,集まったあともストーリーが長編化できるわけで,これを南総里見八犬伝といいます。そして,「椿説弓張月」っていうのは,保元の乱で破れた源為朝が,琉球に渡っていて琉球王国を興すといった,一見ほんまかいな?っていうような話なのですが,実は琉球王国の歴史の本には,この琉球王国を建てたのは源為朝であることが記録されていたりします。

 

洒落本からの発展

洒落本といったライトノベル系から発展していったのが滑稽本人情本です。

滑稽本

滑稽本というのは,庶民生活の滑稽さを会話中心で描かれたものです。代表的な作品としては,十返舎一九の「東海道中膝栗毛」があげられます。やじさん・きたさんの二人が旅をする中で,ちょっとしたドジを踏んだり,酔っ払った姿を滑稽に描いたもので,これはなかなか面白いです。そして,式亭三馬の「浮世風呂」ですね。庶民の集まる銭湯での世間話をする様子におかしみなどを見出す作品です。あと「浮世床」も有名ですね。これは床屋さんでのお話で,髪を切る人と髪を切られる人のトークが描かれています。

人情本

洒落本からの流れを汲む中でも,恋愛系の要素を引っ張ってきて,町人の恋愛をちょっと色っぽく描かれた作品で,為永春水の「春色梅児誉美」が有名です。しかし,この色っぽさが風紀を乱すということで天保の改革で弾圧の対象となりました。

 

黄表紙からの発展

つづいて絵が主体の漫画本系ですね。これが,合巻といって黄表紙を数冊まとめて閉じ合わせたものです。現代のイメージからするとコンビニで売られている週刊少年ジャンプみたいなものですね。ちょっと立ち読みして暇がつぶせる庶民に愛された漫画本ですね。代表作としては,柳亭種彦の「偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」という本です。紫という文字は実は紫式部のことを指していまして,偽物の紫式部が田舎源氏を書いてみたよ!架空の紫式部が架空の源氏物語を書いたよ!といったイメージなのですが,そこで,いろいろと大奥と女遊びをする11代将軍・家斉のスキャンダルを風刺したのではないかと言われ,これも天保の改革でお上を批判したとして処罰を受けます。ここまで,化政文化で発展したストーリー系小説作品を紹介しました。

 

俳諧

松尾芭蕉とは随分時代的にも開きがあるのですが,代表作として小林一茶の「おらが春」ですね。

 

和歌

平明な歌風(あんまり技巧的ではない)の桂園派の一人で香川景樹(かがわかげき)という人物が代表的です。他にも,良寛(りょうかん)という越後の禅僧が,農民のくらしや庶民のくらしぶりを歌で表しました。

狂歌

世の中を風刺したり,滑稽さをまとわせている滑稽味のある5・7・5・7・7の短歌のことを狂歌といいます。代表作としては,太田南畝(おおたなんぼ)又の名を蜀山人(しょくさんじん)また,石川雅望(いしかわまさもち)又の名を宿屋飯盛(やどやめしもり)といって,いかにも面白みのあるペンネームですよね。

 

紀行・随筆

鈴木牧之(ぼくし)といって越後生まれの商人で,越後というととても雪深いところの国なのですが,そんな雪国の人々の生活について描いた随筆「北越雪譜(ほくえつせっぷ)」が非常に受験で出題されたりします。あるいは,菅江真澄の紀行日記「菅江真澄遊覧記」では,菅江真澄三河国から出て,東日本や東北各地を旅していろいろ見聞きしたことを記した作品です。

 

今回は,化政文化の文学についてみていきましたが,やはり小説系の枝分かれしていくジャンルをしっかり抑えておきたいところです。今回は以上です。