日本史オンライン講義録

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104 化政文化③

今回は化政文化の最終回,美術・芸能・民衆文化についてみていきます。

浮世絵

この時代,浮世絵というジャンルの風景が流行します。たとえば,葛飾北斎歌川広重などが代表的です。その前の,喜多川歌麿東洲斎写楽とかは,人物画が中心でしたね。元禄期の漢字5文字系作者は人物画,文化文政期の漢字4文字系作者は風景画と抑えておけばよいのではないでしょうか。

葛飾北斎の「富嶽三十六景」では,富士山などの日本各地のいろんな風景を36枚の連作絵画にしたものですね。波のしぶきの奥に富士山を眺める風景とかです。そして,歌川広重の「東海道五十三次」などがあります。実はこの風景画たちは,西洋の印象派画家に大きな影響を与えていきます。こうした浮世絵が西洋の印象派画家であるモネ・ゴッホなど日本でも有名な画家たちも北斎や広重の作品を参考にせっせと模写していくわけですね。ということで,浮世絵の手法も西洋化がに取り込まれたということになります。

 

絵画

まず挙げたいのが四条派です。四条派では,呉春といって,円山派からわかれ四条派を起こしました。円山派は風景をクールに描くのに対して,四条派はわりと情緒的に描くのが特徴です。たとえば,鳥を描くときも単純に描くのではなくて,その鳥にちょっとした演技をさせて情緒的に描くといったところが四条派にはあります。

 

文人

文人画といえば,それまでは池大雅とか与謝蕪村の流れを組んでいるジャンルです。代表的な作者として,豊後の田能村竹田(たのむらちくでん),そして江戸の谷文晁(たにぶんちょう)などが挙げられます。谷文晁には弟子がいて,それが渡辺崋山といって蛮社の獄でモリソン号事件の幕府の対応を批判して弾圧されてしまうのですが,そんな渡辺崋山は洋学のところでも顔を出していますし,今回の絵画のジャンルでも顔を出しています。侍の子どもとして生まれたんだけども,絵もやるし学問もやるしまさにマルチタレントですね。しかも文人画では「鷹見泉石像(たかみせんせきぞう)」は並の絵の巧さではないんですよね。筆を使った非常に細部にまで神経が行き届いたような絵を描いています。

 

芸能

この時代の芸能といえばやはり歌舞伎ですね。宝暦天明期あたりから浄瑠璃から歌舞伎へと人々の興味が移ろいでいきます。この歌舞伎では,市川團十郎などの人気役者が登場します。この歌舞伎の流行にのって,各地では歌舞伎を真似した村芝居(地芝居)が演じられるようになります。この流れを組んで現代でも,旅芸人一座なんかがところどころ残っていますよね。

 

狂言

この狂言では,ストーリーを書く人として代表的なのが河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)で,盗賊を題材とする白浪物で好評でした。言ってみればルパン三世のルパンのように,仲間や人々への義理人情にあついルパンが,追手の銭形警部のとっつあんから華麗に逃げ切る様子なんていうのは,見るものからすれば痛快ですよね。引き締めによるすさんだ雰囲気の天保時代には,ストレスを溜め込んだ民衆らのはけ口として楽しまれたのでありました。

 

その他

また,多くの都市に芝居をみるための芝居小屋などが設置されたりしました。そして,歌舞伎狂言とかではなく,庶民がみたいみたいといったものはどんどん演じられていくようになりました。たとえば,見世物・曲芸・講談・落語・寄席・相撲などの興行が行われました。

 

では最後に今までのジャンルでは分けることの出来ない民衆文化を紹介したいと思います。

寺社

修繕費などを得るため,若干儲けさせてもらうよってことで縁日,あるいは開帳といって,たとえばお寺の大切な仏像は普段はあえてみせないで,特定の日だけ開放してお金を取ることをいいます。たとえば,私が見た中では東大寺法華堂の執金剛神像とかですね。これは秘仏として特定の日しか公開されないのですが,でも見たいからつい足を運んじゃうんですよね。そして,集まったお金でお寺の修理をすることになるわけです。あるいは,富突(とみつき)といって,箱の中にたくさんの木のプレートがあって,穴から尖った棒でドンって突いて,引いた木札がもらえるっていう宝くじみたいなものですね。これも寺社の修繕費へと当てられました。

 

旅行

一生に一度,どこか有名な神社へお参りにいってみたいものです。この時代,伊勢神宮にお参りにいく巡礼の旅のことをお蔭参りといいますね。それに限らず,いろんな聖地・霊場ですね,たとえば四国八十八箇所を巡ってご利益を得ようとする巡礼が流行しました。今もむかしもパワースポット的な場所は人気があるということですね。

 

年中行事

今もこいのぼりやひな人形を飾ったりしますが,そういった節句彼岸会あるいはお盆に先祖を祀って参る盂蘭盆会(うらぼんえ)などの行事のことをいいます。あるいは,神様といっしょに夜を明かす日待,神様といっしょに月の出をまつ月待,「かのえさる」の日に寝ちゃったら早死するといった言い伝えがあるので眠らずに過ごす庚申講などがあります。

 

今回で化政文化はおわりです。お疲れ様でした。