日本史オンライン講義録

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062 室町文化①(南北朝文化・北山文化)

目次

 

室町時代の流れあるいは社会・経済・外交についてお話をしてきました。そして、最後に室町時代の文化について見ていこうと思うのですが、この室町時代の文化というのは例えば、茶道や華道、そして今我々が暮らしている部屋で和室とかってありますよね。その和室の造りは書院造というのであって、室町時代の文化っていうのが私達日本人の考える和風文化であるっていうような原型が出来た時代であり、あるいは庶民に伝わって多様化していった時代ですので、室町文化というのはそういった意味で非常に重要です。しかも、室町文化今回は3回に分けて紹介をするとてもボリュームの大きいものとなっています。頭の整理の方をよろしくおねがいします。室町文化は大きくわけると、南北朝文化北山文化③東山文化、といったメインの文化に加えて、④庶民の文化、そして⑤仏教の様子、といったように分類できます。ですので、今回は室町文化の3回ある中の1回目として、南北朝文化と②北山文化についてやっていきたいと思います。鎌倉時代のときにもお話しましたが、文化が多様化すると受験生は困るんですよね。覚えることがたくさんあるので…。でも頑張ってやっていきましょう。

 

室町文化

では、南北朝時代やっていきましょう。その前に、室町文化の大枠をもう一度確認しておきます。室町文化は3つに分けることが出来て、1つ目は南北朝文化です。もちろん南北朝動乱期の文化ですね。だいたい誰の時代か言えますか?はい、足利尊氏の時代ですね。そして、2つ目が北山文化です。これは、当然足利義満の時代の文化ですね。これは中学校のころに習いましたよね。そして、3つ目は、東山文化です。これは8代将軍の足利義政の時代の文化です。

室町文化は3つの時代に分けられる

南北朝文化

 さて、それでは南北朝文化やっていきたいと思います。

史書

南北朝文化の特徴としては、この史書がさかんに作られました、なぜ、南北朝時代は歴史書にポイントがあるのでしょうか。理由はこういうことです。足利尊氏光明天皇が組んで北朝としたのに対し、南朝後醍醐天皇でしたね。そうすると、北朝南朝が争っており、天皇家武家がこれに乗っかているわけですが、どちらの方が正統か、どちらのほうがホンモノの天皇で、由緒正しい王朝なのかっていうことを文学の形で、歴史書の形でアピールすることになります。われこそが正統な王朝であるという正当性を文学でアピールするわけですが、代表的な歴史書を挙げていきます。

神皇正統記

まずですね、神皇正統記(じんのうしょうとうき)ですね。この歴史書を書いたのが、北畠親房(きたばたけちかふさ)です。こちらは、天皇の系統から言って後醍醐天皇の方が正統ですよ!ということを書いた南朝よりの立場です。

「梅松論」

そしたら北朝寄りの立場の歴史書もあります。それが「梅松論(ばいしょうろん)」ですね。これは、足利氏の政権獲得のプロセスを武家の立場から記述しています。足利氏の政権獲得ということで、主役は足利氏になることから、どちらかと言えば北朝寄りで、主人公の足利氏を梅よ松よと讃えています。ですので、自ずと北朝寄りの文書になりますよね。

「増鏡」

さて、それでは3つ目ですが、3つ目の立場はというと武士・天皇家その間で両者の動向を冷ややかに眺めていた第3の勢力とでもいいましょうか、「公家」の立場から源平争乱以降の歴史を記述しているのが「増鏡」です。

鏡という名のつく歴史書四鏡 「だい・こん・みず・まし」

大鏡・今鏡・水鏡・増鏡

はい南北朝文化、どちらが正統か?という南朝よりの立場の神皇正統記北朝よりの立場の梅松論、そして公家はどちらかというと中立の立場の増鏡で源平争乱以降の歴史を記述しました。このように3つの歴史書が非常に有名な本となっています。

軍記物

で、南北朝文化で忘れてはならないのが、軍記物で有名なのが「太平記」ですね。

太平記

南北朝の動乱全体が描かれています。かつて南北朝時代を取り扱ったNHK大河ドラマ太平記」が放送されていましたが、このような軍記物の太平記をベースに描かれています。

その他の文化

その他流行をつくる担い手となったのが新しいもの好きな武士たち「ばさら」です。たとえば、ばさら大名とかがいまして、奔放でひと目を引くことを好む派手好きの趣味風潮が新しい文化を形成していきます。

連歌

たとえば和歌のルールをあえて崩してみようじゃないかということで和歌にゲーム性を加えて連歌(れんが)と呼ばれる和歌の上の句と下の句を読み合わせる文芸ができてきます。

能楽

能については北山文化のところで詳しく説明しますね。

茶の湯

そして、鎌倉時代にお茶が日本に持ち込まれ、このお茶をただ飲むのではなく、いろいろと発展したスタイルを考えようじゃないかということで、たとえばみんなで集まってお茶を飲んで、娯楽的な茶会である茶寄合を開いたり、闘うお茶と書いて闘茶(とうちゃ)が行われた入りました。闘茶と言うのは何かというと、どこの産地の茶葉、もしくこのお茶はどこの水を使ったものなのか、をそれぞれ当てるゲームでいわゆる聞き茶のようなものが行われたりもしました。

 

北山文化

さぁ、室町時代の2つ目でもある3代将軍・足利義満の時代の文化、北山文化のお話をしていきたいと思います。なぜ北山なのかというと、京都の北山に鹿苑寺というお寺が建てられて、そのお寺には金ピカな建物があるわけですね。これを金閣といってこの時代の代表的な建造物でもあることから、北山文化と呼んでいます。

臨済宗の流行・幕府の保護

この北山文化を象徴するのが、臨済宗の流行です。栄西さんが中国から持ってきた仏教の宗派・臨済宗ですが、鎌倉時代からも幕府の保護は受けていたのですが、室町時代にも幕府の保護を受けていよいよ花開くということになります。幕府が臨済宗に保護を与えたのは、南北朝時代足利尊氏臨済宗の僧の夢窓疎石(むそうそせき)を敬い保護したことからスタートしたと言われています。

五山十刹の制

では、この3代将軍・足利義満の時代の臨済宗はどうなってたのかというと、寺に序列を付けて幕府が管理する五山十刹(ござんじっさつ)の制という制度が出来ました。つまり、お寺の中のリーダーにあたる寺は◯◯寺で、あとはそれに継いで権威・格式の高い順に△△寺、◻◻寺・・・といったように順序付けて管理しやすいようにしました。具体的に示すと、京都五山というのは天龍寺相国寺建仁寺東福寺万寿寺で、鎌倉にも鎌倉五山というのがあって、建長寺円覚寺寿福寺浄智寺浄妙寺って言う風にこれらを五山といいます。さらに五山の上には別格である南禅寺を置きました。五山の下には、十刹がそれぞれ京都に置かれ、南禅寺を筆頭に京都には15寺、鎌倉に15寺あわせて31のお寺を最も格式が高いグループとしたわけですね。天龍寺なんかは足利尊氏夢窓疎石後醍醐天皇の霊を弔うために作ったお寺でありますし、建長寺円覚寺なんかは北条時頼とか北条時宗ゆかりのお寺ですので、1位・2位あたりまでは当然テストにも問われてくることでしょう。

五山の僧の活躍

そうすると幕府が保護したこの31のお寺の僧侶も当然活躍していくのですが、どういう分野で活躍するのかみていくことにしましょう。

水墨画の伝来

中国からやってきた水墨画の技法を採り入れて、明兆(みんちょう)・如拙(じょせつ)・周文らが日本の水墨画の基礎を作ります。とくに如拙の代表作「瓢鮎図(ひょうねんず)」が有名です。

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この画は、ナマズっていうのは表面がヌルヌルしているのですが、そんなナマズヒョウタンで捕まえるにはどうしたら良いか?っていうようなお話を描いたものです。で、何かというと、この臨済宗っていうのは禅の問答つまり和尚さんが弟子に対してクイズを出すわけですね、それで弟子が和尚さんのクイズに答えつつもいろいろ思考することで悟りを得ようとするのですね。つまり、この1つのクイズのネタを図で描いたものがこの瓢鮎図ですね。臨済宗ならではの絵ということになります。のちにこの水墨画ですが、雪舟さんというお坊さんが出てきて、大きく水墨画を花開かせることに成ります。

五山文学

この五山の僧侶が書いた文章のことを五山文学といいます。代表的な人物として、絶海中津(ぜっかいちゅうしん)義堂周信(ぎどうしゅうしん)が挙げられます。

五山版

この五山文学を本の形式にしてたとえば禅の経典や漢詩の文集を出版したりもしました。これを五山版といいます。

能の完成

芸能の一つである猿楽あるいは豊作を祈る祭りである田楽から発展をし、それらにストーリーを持たせてゆったりゆったりと演じる演劇が登場しましたがこれをといいます。この能を公演していた団体がいます。この団体を大和猿楽四座(やまとさるがくしざ)といいます。四座というのは観世座(かんぜざ)金春座(こんぱるざ)・宝生座・金剛座です。この能は、足利義満がいたくお気に入りで、この中でも観世座の観阿弥(かんあみ)世阿弥(ぜあみ)親子が、芸術性の高い猿楽能を完成させます。この内、世阿弥能楽の秘伝の書である「風姿花伝(ふうしかでん)」が有名です。

まとめ

今回は南北朝文化北山文化についてのお話でした。北山文化は、まず鹿苑寺金閣を抑えておきましょう。そして、お寺に序列がついたのでしたね。これを五山といいました。さらに幕府から保護を受けたお寺やお坊さんが文化の中核になったということもポイントの1つです。そして、義満お気に入りの能では、とくに観世座の観阿弥世阿弥父子が演じる能、そして世阿弥の「風姿花伝」あたりも抑えておきましょう。今回は以上です。