日本史オンライン講義録

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018 大宝律令②(民衆と税制度)

前回は,文武天皇大宝律令の前半をお話しました。今回は,大宝律令の後半に入っていきたいと思います。

 

官制(国家公務員の制度)について

官吏の位階について

官制の特色として,官位相当の制というしくみがあります。つまり,国家公務員は官位(位階)をもらい,官位に応じた官職に」任じられますよっていう制度です。まず位階とはどういうことかというと,一位から初位まであります。まぁ,一位の中にも正一位とか従一位に分かれていたり,正一位の中でも正一位上とか正一位下とか細かく別れているのですが,とにかく一位が一番高くて,二位,三位,四位,五位・・・と決められています。

 

そして,基本的に役人さんは最初に初位とかから始まって,偉くなるにつれて位階は上がっていきます。たとえば,私は正五位下だったとしたら,次は正五位上にあがっていくという感じですね。現代の会社組織に言い換えてみれば,本社に社長(①)がいて,その次に専務(②)がいて,その次に部長(③),課長(④),係長(⑤)という役職があったとします。( )内の数字はその会社の階級だと思ってください。また,支店があったとしたら,支店長(③)が本社の部長(③)と同じ階級,支店の部長(④)が本社の課長(④)と同じ階級,支店の課長(⑤)は,本社の係長(⑤)と同じ階級。さらに,子会社があったとしたら,子会社の社長(③)は本社の部長(③)や支店の支店長(③)と同じ階級,子会社の専務(④)は,本社の課長(④),支店の部長(④)と同じ階級,子会社の部長(⑤)は本社の係長(⑤)や支店の課長(⑤)と同じ階級だったとします。ここで,例えば,支店の課長(⑤)が一つ階級を挙げて④になったとすれば,つける役職としては,本社の課長(④)か支店の部長(④)か子会社の専務(④)のどれかということになります。わかりましたか?④の階級を持つものにはあらかじめどこかの④に相当したポジションにつけるという制度のことを,飛鳥時代では官位相当制といいます。

 

そうすると,次はちょっとズルいんですが,蔭位(おんい)の制というものがあります。本当は,位階は初位からスタートするのが普通なのですが,たとえば三位以上の子,五位以上の孫であれば,途中の位階からスタートすることができるといった制度です。つまりお父ちゃんが本社の社長であったら,途中をすっ飛ばしていきなり本社の課長からスタートできるってみたいなイメージです。飛鳥時代でいえば,お父ちゃんが一位だったら,本来は初位からスタートすべきところを,途中の従五位下からスタートできるっていうちょっとズルい制度なんですね。

 

さらに,四等官制(しとうかんせい)という制度もあります。それぞれの役所の幹部クラスには4段階の職務(長官・次官・判官・主典)が設けられてあって,この呼名を「かみ」「すけ」「じょう」「さかん」といいます。たとえば,さきほどの会社組織でいえば,本社の社長のことを「かみ」,専務のことを「すけ」,部長のことを「じょう」,課長のことを「さかん」と読みます。支店の支店長のことを「かみ」,支店の部長のことを「すけ」,支店の課長のことを「じょう」・・・といったような感じです。飛鳥時代では,たとえば国のリーダーである国司の場合,のことを「かみ」,のことを「すけ」,のことを「じょう」,のことを「さかん」と読みます。

 

官吏の給与

ではこれらの役人には,どんなお給料が与えられるかというお話をしましょう。お役人の中でも六位以下の役人には給料が手渡されるのですが,今から話すのは五位以上の上級貴族の給与体系を知っておいてください。まずは,封戸(ふうこ)といいます。ここからの税収が役人の給料となります。たとえば2000戸といったら2000の農民世帯があって,その2000戸から上がってきた収穫はあなたの収入として良いですよっていうイメージです。そして,五位以上の上級貴族には追加で位に応じた田んぼが与えられます(位田)。また,官職に応じて追加で田んぼ(職田)が与えられました。まぁ,えらいさんになったら人とのお付き合いもあるでしょうし,何かと物入りでしょうということで位田や職田だ与えられたといってよいでしょう。

 

司法制度(律令の「律」の部分について)

とくにテストについて出たりするのは,司法制度つまり刑罰として五刑(「笞」「杖」「徒」「流」「死」)があります。「笞」はムチで10回しばかれる刑,「杖」は木刀で10〜50回しばかれる刑,「徒」っていうのは今で言う懲役刑ですね。「流」は島流し,「死」は死刑です。これら五刑に対して八虐というものもあります。八虐とは,自分より上の存在の人(親・目上の人)に失礼な態度をとった場合に課せられる刑罰のことです。

 

民衆の生活

次は,農民の暮らしについて律令制から迫ってみたいと思います。まずは,農民たちが何人かいたとしますね。そうするとこの何人かの集団のことを「戸(郷戸」といいます。「戸」はだいたい25人程度で1戸としていました。さらに,もっと小さい生活の最小単位としては「房戸」といって3〜4人くらいのいわゆる家族のことです。この「戸」が50個あつまれば「1里」としました。そして1里という単位があつまって,郡となり,やがては国となったのでした。つまり里を構成する単位が「戸」であり,この戸っていうのは郷戸ともいわれ,25人程度の集団である。そして,この郷戸を構成する最小の単位はというと,これを房戸といったのでした。

 

そうすると,国はこの戸から税を搾り取っていかなかればなりませんので,そこで台帳を作成することになりました。そして,この戸を帳面にのせていくのですが,これを戸籍といって,班田収授(土地の受け渡し)や人員構成(男女年齢)を確認するための基本台帳です。これは,6年毎に作成をします。土地をどれだけ渡したかを把握するのが戸籍だとすれば,今度は税金をどれだけ徴収しようかと細かく記入されたものを計帳といい,これは毎年作成されます。そりゃ国からすれば,あげるよりも,もらう方のことを熱心に力をいれたくなりますよね。そこで,班田収授法を出しました。おまえら農民らに安定した生活をさせてやろうということで,6歳以上男女口分田を与えて,そこからの収穫の一定量を徴収しました。口分田とは,国から与えられる一定面積の田んぼのことをいいます。

 

私の上の子どもは来年6歳になりますから,口分田が分け与えられることになります。ただし,口分田の班給額はそれぞれ細かく決められていて,田んぼの面積を量るときにつかう単位のことを「段」というのですが,男性は2段女子は1段120歩です。1段というのは360歩のことなので,男子は720歩・女子は480歩くということになりますね。

 

はい,土地を配りました。では,いよいよ農民から税を徴収していきたいわけですね。そんな税負担においては,租・調・庸 制をとりました。

口分田を支給されたものは,男女ともに1段につき2束2把の稲を納めなればなりません。

 

調

各国の特産物を納めなければなりません。どんなものがあるかというと,布とか糸とか綿とか,やはり各国の特産物をおさめなければなりませんでした。

 

「庸」というのは,雇われるといった意味を持っています。都で10日間労働を強いられる労役のことをいいます。たとえば,加賀国とか越前国とか下総国とかそういう遠い国から何十日もかけて都にやっていきて,わずか10日間働いたらまた帰っていかなければならないとなると,それはそれで効率が悪いですよね。じゃ,そのかわりに。都まで歩いていって仕事をするそのかわりに,布2丈6尺を納めてくれればOKですよといったのでした。このように,租は男女に課されて,一方で庸・調については男子のみに課されるのでした。また,年齢によっても増減されました。たとえば,この調なんですけれども,還暦を過ぎて61歳になれば2分の1で済みました。17〜20歳なら4分の1でいいよといったように,年齢によって増減される男子のみの税が庸と調です。

 

さて,もう1つプラスαの知識で抑えておいてほしいのですが,そんなお納めしなければならない税ですが,実際にどこへ納められていったのかというと,調や庸は都に行って納めなければなりませんでした。一方で,租は,男女ともに地方のお役所である国衙納めなければなりませんでした。そうすると,男子のみで年齢によって増減するのは調や庸のみということになりますね。口分田は年齢によって増減はしませんので,ここら辺りの知識を正誤問題では問うてくるので注意しておきましょう。

 

運脚

以上,代表的な税として租調庸の3つでしたが,そのほかの税負担についてもみていきましょう。さて,納めなければならない調や庸は運んでいかないといけないですよね,都まで。運ぶのだ誰だい?ってことになるのですが,これは運脚です。調や庸を京都まで運ぶ義務のことをいいます。運ぶのはそのムラや子どもから出してくれよってことで,運脚は正丁(せいてい)が選ばれました。正丁というのは成人の男子に課されたってことですね。

 

雑徭

そしたら,今度は雑に働くとかいて雑徭(ぞうよう)という労役があります。だから国の役所である国衙で働くことになるのですが,年間60日を上限にその人民を国司が働かせるということになります。

 

出挙(すいこ)

次に,これは税?ってな感じもするのですが,公出挙(くすいこ)といいます。これは国家が強制的に稲を貸し付けるっていう制度です。私は借りたくはないですーっていっても,来年まくために籾が必要だろ?って迫られるんですよね。借りた稲はただ返すだけではいけません。借りたら分の利子をつけて返さなければならないのです。その利子率はなんと5割。だから1キロの稲を貸し付けられたら,1.5キロの稲にして返さなければならないわけですね。だけれども,これはまだマシな方です。それはどういうことかというと,豪族が私的に稲を貸し付けた場合は利子率はどうなるかというと,なななんと10割。1キロかりたら2キロにして返さなければならないっていう倍返しです。これはきついですね。

 

兵役

成人男性3〜4人に1人が兵士として徴兵されます。この成人男性は,どんなところに所属するかというと軍団に所属します。都の天皇が住まわれる宮中警備にあたるのが衛士(えじ),そして特徴的なのが防人(さきもり)ですね。主に東国の人を大宰府に所属させて,九州のとくに北部の守りを固めさせました。遠く故郷を離れて九州の守りをやらされるっていうちょっと切ない感じですよね。そんな切ない気持ちが歌われた歌を防人の歌といいますので,これはまた文化のところでもやるので覚えておいて損はないでしょう。

 

賤民

賤民とは何かというと,奴隷身分のことですね。奴隷身分には5種類あり,このことを五色の賤(ごしきのせん)といいます。じゃあ,官有の奴隷身分とはどういうことをするのかというと,国のお墓を守る陵戸といいます。国家公務員の命令を実行するような賤民のことを官戸といいます。そして,奴隷といえば奴隷ですが,国の所有物としての奴隷のことを公奴婢(くぬひ)といいます。そして,豪族や個人の所有する奴隷のことを家人(けにん)といったいります。そして何といっても奴隷の身分に一番近いのが私奴婢(しぬひ)といわれる存在です。これはいわゆる奴隷のことで,売買され豪族にお使えします。

 

で,実はこの陵戸・官戸・公奴婢なのですが,この人たちは良民なりの口分田が与えられるようになります。家人と私奴婢は良民よりは少ないが,口分田も与えられます。これが男は240歩女が160歩,すなわち良民の3分の1ということができます。まとめますと,陵戸・官戸・公奴婢はというと,そもそも男が2段というのが基本的な区分でしたから,1段が360歩でしたので,720歩ということになります。そして,女性はこの半分になりますので,1段120歩つまり480歩です。そして,賤民のうち家人と私奴婢は,いわゆる奴隷身分の人たちにもちゃんと口分田は与えられるものの,男は240歩,そして女は160歩ということになります。繰り返しますが,年齢によっての増減はありません。そして,課税の対象となるのは6歳以上の男女です。

 

今回は理屈の話が多かったですが,もしよろしければ一度問題演習などを通して,とくに計算問題なんかができれば,ここは理解できたも同然です。頑張ってください。根塊は以上です。