日本史オンライン講義録

受験勉強はもちろん、日々の学習にも役立つ日本史のオンライン講義です。 

002 縄文文化の成立

前回は更新世のお話をしました。今回はいよいよ我々にも耳染みのある縄文時代へと入っていきたいと思います。さて、日本史のお話をすると、たいていの人は縄文→弥生とくるのですが、高校日本史では更新世→縄文→弥生となります。前回の更新世はイコール氷河時代でもあり、旧石器時代でもありました。この時代の日本というのはまだ大陸と繋がっていて、日本海が湖のようになっており、そして陸を伝って大型動物が日本へやってきて、それを追ってきた人類が住み着いて日本人になったのではなかろうかというお話をしましたね。

 

地球温暖化による変化

さて、大陸と切り離されて今の形の日本列島が完成したのが約1万年前といわれています。日本列島が切り離されて今の形になったということは、陸が増えたのですか?それとも海が増えたのですか?はい、答えは海が増えたってことになりますね。海が増えたっていうことは、地球が急速に暖かくなったの?寒くなったの?というと暖かくなったわけですね。暖かくなって海の氷が溶けたので、海の水かさが増したのでした。これが約一万年前の出来事です。地球上の陸に乗っかっている氷河が溶けて海の方へ流れ出し、地球温暖化による海面上昇という一連の流れが理解できるわけです。

 

温暖化によってどういう変化が訪れたのでしょうか?それは、動物の世界で変化が現れるのですね。今まで寒い所に最適化されていた大型動物(マンモスオオツノジカナウマンゾウなど)は寒い時にはデカイ身体が体温を維持するのに役になっていたのですが、暖かくなってくるとそれは動きが鈍重で邪魔になるわけですね。そして食べ物を見つけるのには、機動力のある小型動物の方が生き抜きやすくなる、そうなると大型動物がいつしか死滅してしまいます。そうすると、マンモスやオオツノジカにかわってイノシシニホンジカが増加していきました。

 

更新世から完新世

さて、こうした時代のことを完新世といいます。理科の世界でいう第4紀完新世。今までは更新世といって更に新しい世の中とかきましたが、これからは完新世といいます。どちらの方が新しいのでしょうか?更に新しいのか、完全に新しいのか?答えは完新世ですね。さらにっていうのはこういうことです。たとえば私が頑張ってフェイシャルエステなんかを施してもらって更にかっこよくなることはできるかもしれませんが、しかし私がいくら頑張ったところで完璧にかっこよくなれるかというと、それはちょっと諦めた方が良さそうですよね。「更に」と「完璧に」だったら、上位に来るのは「完璧に」であることを理解してください。なので完璧に新しいのが第4紀完新世といい、ここから縄文時代が始まると思って下さい。地球の気候の温暖化により、動物がちっちゃくなったからそれに伴って人間のライフスタイルも変化をしていきます。

 

第4紀完新世縄文時代

では、完新世は先程もいいましたように動物が小型化した時代でした。マンモスやナウマンゾウなんかは石や槍を投げれば簡単に命中させることができましたが、小型動物なんかは機動力がありすばしっこいので、なかなか捕らえることが難しくなってきます。こういった動物を捕まえるために、たとえば弓矢が発明されるわけです。人がモノを投げるよりも、遠くへ飛ばす道具の方が理にかなっていますもんね。弓矢と並ぶ縄文時代の大きい変化は何かといえば、コレですね。縄文時代の名の由来にもなっている「縄文土器」の制作ですね。特徴はというと、まだ粘土の状態に、縄をあてがってコロコロコロっと転がすと連続的なシマ模様ができるわけですね。こういった縄のことを撚糸(よりいと)というのですが、この撚糸による文様がみられる場合もあります。

 

縄文土器の制作

さて、この「縄文土器」ですが、まだ瀬戸物を焼くような高度なカマド技術はまだありませんでしたので、焚き火をわんさか炊いてその中に粘土で作った土器を放り込んで焼くといった感じでした。いま我々がやっている焚き火の中で土器を作るようなものですので、見事な土器というわけではありません。低温で焼かれ、厚手で黒褐色(くろかっしょく)、ちょっと無骨な印象を与える土器です。そして、土器の変化により縄文時代を6つに区分しています。まず縄文土器が出たての時代を草創期といいます。教科書 によると、世界でも最も古い土器の一つと言われています。そして、早期、次に前期中期後期晩期といいます。この6つに縄文時代を区分することができます。その中でも最も特徴的なのが中期です。それはなぜなら、中期に見られる特徴的な土器として火炎式土器といってまるでメラメラっとした炎のような土器がみられます。

磨製石器

更新世打製石器を使用する時代、つまり旧石器時代であるというお話をしましたね。そして、縄文時代からは新たに磨製石器が登場し、世界史的には磨製石器を使う時代のことを新石器時代といわれています。ですが、日本の縄文時代は世界の石器の時代と比べるとちょっとしたズレが生じています。というのも、世界では磨製石器を使うようになると農耕牧畜が始まっていくんですが、日本の場合は、磨製石器(世界史的にいう新石器時代と同じ道具)を使いながらもまだまだ食料の獲得方法としては狩猟・採集といった獲得経済を行っていた時代でした。こういった違いがあります。

【世界】新石器時代=農耕・牧畜

【日本】縄文(磨製石器)=狩猟・採集

そして、ここでもう一つ抑えておきたいのは、打製石器も併用されていたってことです。磨製石器打製石器では、何が違うのかというと用途が違います。たとえば、すり潰したり、削ったりするといったことが得意なのですが、打製石器は何しろ切れ味が鋭くてスパーッと切れるわけなので、スパーっと切りたい場面では打製石器を使い、すり潰したり、削ったりする場面では磨製石器を使う、といったように道具を使い分けていたのでした。磨製石器の時代になったからといって、打製石器は使われなくなったっていうわけではないのです。センター試験や私大入試の正誤問題とかではよく問われる箇所でもありますので注意をしておきましょう。

 

ということで、今回は前回の更新世から完新世へと進み、完新世になると地球が温暖化し、大型動物から小型動物へと移り変わるようになり、それに伴って人々のライフスタイルも変化していったのでした。次回は、この縄文時代の中の人々のくらしや文化についてお話をしていきたいと思います。