日本史オンライン講義録

受験勉強はもちろん、日々の学習にも役立つ日本史のオンライン講義です。 

032 荘園の発達

目次

 

さて、ここでは平安中期の社会・経済を見ていくことにしましょう。

復習

そもそも荘園とは何だったっけ?そう!もともとの意味は私有地でしたね。大化の改新の頃、改新の詔の中で、「すべての土地は国のものであり、すべての民は国のものである」とする公地公民が謳われていました。しかし、この公地公民の原則を崩した改革を行ったことによって、私有地がだんだん増えてきたんですね。この私有地が荘園です。

その改革というのが墾田永年私財法でしたね。開墾したら自分の土地として認められるということもあって、財力のある寺社や貴族を中心に荒れ地を耕し、草木を刈って新しく畑地を開墾したのでした。こういうタイプの荘園を初期荘園(墾田地系荘園と言いました。

しかし、初期荘園(墾田地系荘園)は10世紀頃には徐々に減っていきます。それにとって変わった新しいタイプの荘園が寄進地系荘園なので。

寄進地系荘園の出現

10世紀後半から徐々に開発領主(かいほつりょうしゅ)って奴らが出現しました。開発領主というのは何者なのでしょう?前回、負名体制についてお話したことを覚えていますか?人に税をかけてもその人が逃げてしまうと税がとれないので、土地に税をかけたのでしたね。「もしその土地をこれから耕すのであれば、その土地にかけられている税をまずは先に払ってくださいね!」といったように、その土地にかけられている税を払うことを条件に、その土地の耕作を請け負う人のことを田堵(たと)といいました。

大名田堵

さて、そんな田堵ですが余力があってたくさんの税を納めることができるのであれば、さらに多くの土地を所有してもOKだったのです。このようにいくつもの土地を兼ね備えた田堵のグレードアップ版のことを大名田堵といいます。では、この考え方をもうちょっと発展させていきますよ。

開発領主

さて、大名田堵の所有する土地周辺をみわたしてみると、まだまだ開墾されていない土地が多くあります。そこで、大名田堵の中から「税は納めますからもっともっと開墾してもいいですか?」という頼もしい大名田堵が現れてくるわけです。国としても、「せっかく荒れ地を開墾して土地の生産力を高めてくれるのであれば、税を納めさえすればたくさん土地を開発しちゃってもかまわないよ!(労働を税として納める)臨時雑役なども免除してあげましょう。」となるわけです。こうして出現した大名田堵のグレードアップ版のことを開発領主(かいほつりょうしゅ)といいます。たくさんの土地を開いて経済力をつけていった開発領主ですが、現地の役人である在庁官人となったり、国衙の行政に参加したりするようになります。

寄進地系荘園

そこで、前回話をしましたもう一つの要素、それが受領です。よくばり国司のことですね。開発領主にとっては、せっかく開墾した多くの土地なのに、よくばり国司である受領どもに重税を課されてもぎ取られたら、それはたまったもんじゃありませんよね。そこで、より上位の貴族(中央の権力者など)に土地を寄進し(プレゼントし)、荘園にしてもらう対策をとりました。そして開発領主らは、自ら下司(げし)といわれる荘官(荘園の管理人)となり、荘園を管理するのでした。ショートコントにすると以下のようなイメージです。

  • 開発領主A「ふう、また新たに土地を開発しちゃったぜ。でもよくばり国司にもぎ取られるのは勘弁なので、ここは藤原様に寄進しよう。」
  • 藤原さん「よしよし、じゃあ寄進してくれた土地はしっかりこの私が守ってやろう」
  • 開発領主A「ありがとうございます。」

そして数日後・・・。

  • 受領B(よくばり国司「やいやい、お前たち!税をよこせ!」
  • 開発領主A「いやいや、この土地はもう藤原さんに寄進しましたよ。文句があるなら藤原さんのところへいって下さいよ。もぎ取れるもんならね。ヒヒっ。」
  • 受領B(よくばり国司ぐぬぬ・・・。偉そうにぃ・・・。でも、仕方ない。」

このように開発領主から寄進(プレゼント)を受けた荘園領主のことを領家といい、そして、重ねて寄進を受けた上級の荘園領主のことを本家といいますので、区別ができるようにしておきましょう。ややこしいところなので、もう一度まとめますね。

 

開発領主たちがよくばり国司の支配から逃れるために、まずは荘園領主に寄進(プレゼント)をします。寄進(プレゼント)をうけた荘園領主(寺社や貴族)のことを領家といいます。この領家(貴族や寺社)は自らの出世のため、ゴマすりのためにさらにより強力な摂関家や皇族に重ねて寄進(プレゼント)をします。この重ねて寄進(プレゼント)を受けた上級の荘園領主藤原氏や皇族)のことを本家といいます。この領家・本家のうち、実質的に土地の面倒をみている方を本所というのです。(領家が本所の場合ありますし、本家が本所の場合もあります。)

荘園の権限拡大

不輸の特権

このように寄進地系荘園が出現しはじめると荘園領主たちは、次第に不輸などの特権を主張し出すのです。

  • 荘園領主「この土地はもう藤原様に差し上げた土地なのだから、国への税は納めなくていいですよね!」
  • 政府役人「ふむ、今は藤原様の土地なので納めなくてもよかろう。」
  • 荘園領主「やった!じゃあ、一筆書いてくださいよ。よくばり国司がやってきたときに、それを見せれば一発で追い払うことができるので。」

このように太政官民部省によって税を免除された荘園のことを官省符荘(かんしょうふしょう)といい、国司によって税を免除された荘園のことを国免荘(こくめんのそう)といいます。

不入の特権

さらにこんな特権もあります。例えば、よくばり国司がこの土地をもぎ取るために「どれどれ、この土地を今から立ち入り検査するぞ!」と検田使を派遣させます。しかし、上位の貴族に寄進しているので、この検田使の立ち入りを拒否することができる特権のことを不入の権といいます。