日本史オンライン講義録

受験勉強はもちろん、日々の学習にも役立つ日本史のオンライン講義です。 

159 独立回復後の日本

前回、日本はサンフランシスコ平和条約を結んで国際社会に復帰しました。それと同時に日米安全保障条約を結び、日本はアメリカの同盟国として国際社会に復帰するということになりました。これが第3次吉田茂内閣のときです。

 

今回はその後の日本を見ていこうと思うんですが、その前に日本を取り巻く国際情勢を見ていきたいとおもいます。

 

雪解けの時代

この時代も冷戦は継続しているのですが、朝鮮戦争をしばらくして米ソは「雪解けの時代」を迎えます。雪解けっていうのは「春が近いよ」っていうことなのですが、その名の通りアメリカとソ連の対立が緩和されるムードが出来ました。それは何かというと、これまで冷戦を引っ張っていたソ連の親分、スターリンが死去したのです。これがきっかけで今までの東西対立が緩和していくことになります。

 

例えば、スイスのジュネーブではアメリカ・イギリス・ソ連・フランスの首脳が集まって4巨頭会談が行われたり、スターリンの後にソ連の指導者になったフルシチョフアメリカのアイゼンハワー大統領と会談をしたりするわけですね 。これでソ連アメリカが少し仲良くなるかな〜と思っていたところ、状況が一変します。

 

スプートニクショック

それがスプートニクショックです。これはソ連が、直径50センチの丸い人工衛星スプートニック号を打ち上げて、地球をぐるぐる回すっていうことに成功したのですが、アメリカはこれに遅れて直径16センチの人工衛星を打ち上げようとするのですが、打ち上げ直後に爆発しちゃったわけですね 。その後ソ連はスプートニック2号に犬を乗せて宇宙に飛ばすっていうことをいとも簡単にやってのけるわけです。ということは犬の代わりにアレを載せ替えることもできるわけですよね。そう、核弾頭!つまりロケットミサイルの技術を獲得してしまったのがソ連なのです。一方でアメリカは人工衛星の打ち上げに失敗しているわけですよね。

 

ソ連は、強力なリーダーを失ってアメリカになめられかけていたところ、ミサイル技術を獲得したことによって、フルシチョフは一転して強気になっていき、今度は対立を深めていくということになります。それがキューバ危機です。

 

アメリカと南アメリカの間にカリブ海という海がありますが、このカリブ海に浮かぶ島がキューバです。それまでキューバアメリカ寄りでした。しかし、キューバ革命っていうのが起きて、カストロとかゲバラっていう人たちが一気にソ連寄りの社会主義国にしたわけです。すると、ソ連はこのキューバにご自慢のミサイルを運び込むわけです。つまり「オレたちはキューバからアメリカを攻撃できるんだぜ!」っていうことですよね。アメリカからすれば、「今まで味方だったキューバにミサイル基地ができてしまっては大変だ!」ということで軍艦を並べてキューバを取り囲んで、「もしキューバに入るようなソ連の船があったら追い返そうとしたのです。結局この後、どうなったのかというと、ソ連はこのキューバにミサイル基地を置くことを断念するんですが、キューバ海上封鎖が始まってこのミサイル基地が引き上げるまで約1週間、世界は全面核戦争の危機に瀕することになったのでした。

 

その後、世界は「やっぱり核兵器って怖いよね」っていう流れになって、部分的核実験 停止条約条約核不拡散防止条約が結ばれます。

 

ベトナム戦争

今度はベトナム戦争です。ベトナムは昔フランスのものだったのですが、ここにホーチミン率いるべトナム民主共和国というのが出来て、フランスと戦ってフランスを追い出すことに成功したかにも見えました。このホーチミン率いるベトナム民主共和国はどちらかというとソ連寄りだったので、独立した後にソ連とくっつくことをはそう簡単にさせたくないアメリカが、ぺトナムに乗り込んでベトナムを倒そうと潰そうとした戦争がベトナム戦争です。

 

つまり、冷戦を継続しながらもアメリカとソ連は振れ幅が大きいわけですよ。雪解けの時は対話ムード、でもソ連がミサイル技術を開発するとまた喧嘩になって今度は核戦争の危機を迎えます。そして反省から対話路線に転じたかと思えばまたベトナム戦争で東西が対立するということになるわけですね。

 

第三勢力の台頭

それでは米ソ以外の国々を見てみましょう。アメリカにも子分みたいな国があるわけで、例えばフランスやイギリスや西ドイツのような国々です。一方でソ連にも、中国やハンガリーチェコスロバキアなどの国々が子分にいるわけです。 でも米ソの関係にこんなにも振れ幅があると、子分の国々もをちょっと疑問に思ってくるわけですよ。「リーダーであるアメリカやソ連がくっついたり離れたりするから、結局振り回されて困るのはオレたちだ。だからオレたちはある程度まとまっておかないといけないよな」って思いはじめた国々が、新しいあり方を模索するわけですね。例えばヨーロッパの西側の諸国でフランス・ドイツ・イタリアではヨーロッパ経済共同体とかヨーロッパ共同体というのを結成するようになります。アメリカやソ連じゃなくってヨーロッパの国々で独自の動きをしようってなるわけですね。

 

あるいは、中華人民共和国は、中ソ対立というものが起きます。ソ連フルシチョフが平和共存路線に転換してアメリカと会談をするわけです。そうすると中国としては、「ついさっきまで朝鮮戦争北朝鮮を支援してアメリカと戦っていたばっかりなのに、俺たちの親分(ソ連)は、急にアメリカと対話を始めちゃったよ。せっかく朝鮮戦争でオレたちは戦ってたのにハシゴを外された気分だぜ。」ってことで、中国とソ連が対立するようになります。

 

ソ連はロケットやミサイル爆弾っていう物理的な力でアメリカに意地を張ろうとしたのに対し、中国は、国民のハートを精神面で改革させていく文化大革命で、ソ連とは違う独自の社会主義を目指すようになります。あるいは、アメリカやソ連どっちの味方にもつかない第三勢力として、アジア・アフリカの国々が平和五原則アジア・アフリカ会議を開くことによって、アメリカやソ連がどれだけ振れ幅があろうとも俺たちは独自 路線を追求していくぜ!」といった国々が現れていくわけです 。「これでアメリカやソ連の気まぐれにもうお付き合いすることもなくなったり、いちいち動揺する必要はなくなったよね」っていうのが狙いだったわけですね。

 

独立回復後の日本

それでは本題の日本に戻っていきましょう。第3次吉田茂内閣の後半っていうところでサンフランシスコ平和条約が結ばれたのでしたが、吉田茂内閣は第4次・第5次とつづきます。何をやったかというと、保守体制と安保体制の推進です。この保守っていう言葉の解説は次回に詳しくしたいと思いますが、サンフランシスコ平和条約で国際社会に復帰し、 日米安全保障条約アメリカの同盟国となった体制を守っていこうという働きが保守体制で、吉田茂内閣はそれを推し進めようしていきます。

 

まずはアメリカの同盟国として再軍備を進めていくために、警察予備隊を強化して保安隊と名付けます。日本はアメリカと新たに結んだMSA協定を結ぶのですが、内容としては「アメリカはアメリカで軍事援助はするが、日本も日本で自衛力を強化しなさいよ」って要求をしてきたのでした。そこでこの保安隊がさらに強化されて、防衛庁が新設されます(現在の防衛省)。そして、陸海空の自衛隊が発足していくということになります。

 

そして、この安保体制を守っていくために破壊活動防止法が制定されます。これは血のメーデー事件といって皇居の前でデモ隊と警官隊が衝突した出来事がきっかけて制定されました。さらに、公立学校の教員が政治活動を行うことや、政治教育を行うことを禁止しました。これはどういうことかというと、そもそも日本はサンフランシスコ平和条約と安全保障条約を締結したことから、アメリカ側の立ち位置だったのですが、しかし当時ソ連に共感する国民もいたわけです。例えば、労働者であるとか社会主義者であるとか共産党員であるだとかは、ソ連をある程度リスペクトしていました。せっかくアメリカと今までうまくいっていて、国際社会に復帰しかかっているところなのに、彼らに活動されてしまうとせっかくの安保体制が崩れてしまう恐れがありますよね。とくに、学校教育にたずさわる現場では、思想教育に大きな影響を与えるものなので、教育委員は公選制から任命制にするなどして彼らの抑制していこうとしたのでした。

 

そんな保守側の動きに対して、野党勢力社会党共産党労働組合系)は、「これは、思想統制であり、再び軍国主義につながっていく「逆コース」ではないのかと批判したのでした。確かに一理ありますよね。そもそも日本は軍国主義要素を取り払い、思想統制などしない自由な国として再スタートしたはずなのにまた戦時中に逆戻りだよって感じもします。

 

さらに、野党勢力ではなく、国民レベルでも米軍基地の反対闘争や原水爆禁止世界大会などの動きを見せて、 軍国主義につながりかねないようなこれらの政策を批判をします。特にこの原水爆禁止世界大会のきっかけになったのが、ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験でした。なんとこの水爆実験で第五福竜丸が被ばくしたことからこの原水爆禁止運動が高まっていくということになります。

 

今回は サンフランシスコ平和条約日米安全保障条約日本の世界の状況をざっと見た後に、吉田茂内閣のお話をしました。この内閣のポイントは、日米でせっかく作り上げが安保体勢を守ろうとする動きでしたが、ソ連リスペクト勢を早いうちに封じておこうとする政策が軍国主義につながりかねないという批判を受けたという内容でした。今回は以上です。